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あの人もこの人も(ロシアン)

 1111HITリクエストで『哀願末期』篠時イツ様より頂きました。

 ロシアな奴らです。

 またも爆笑物ですw
 マクシームが堪りません。
 アラムが可愛いです。
 ヴィクトールも可愛いです。
 リディアも可愛いです。
 とりあえず皆素敵過ぎますw










アラム「っ!!」

リディア「その反応は妥当よね」

ア「え、だっ、え!?」

リ「感謝を込めて、頑張るしかないでしょ」

ア「うっ、え!?あ、うん…」

リ「(大丈夫なの??)アヤメ様、1111HIT有難う」

ア「感謝するぞ」





ちょっと、いや、大分と言って良いと思う。


実の妹で無ければ、確実に息の根を止めてやっている所だ。こいつは血の繋がりが命を救っていることを、我等が父母に感謝すべきである。逆に私は呪わなければいけないが。


異変を感じてから暫く経ったが、一向に止む気配が無い。恥や外聞等を顧みる能力すら無くなってしまったのか。自重を学ばせなくては、厳しい社会では生きていけない。



「兄さん。貴方、自分の状態をきちんと把握出来てるの??」



何時も以上にはっきりとした口調で声を掛けた。私は耳までヤられて無いことを祈るばかり。



「ああ、勿論」



少々、鼻息の荒さが気になるが、目を閉じておけば大丈夫。コミュニケーション能力は低下して無いと言える。きっと基礎は阿呆では無い(筈)。


はあ。
一つ、溜め息を零す。心の準備。これから、この身に降りかかる災難から、精神を守る為なのだ。


兄に身体を向け、意を決して瞳を開ける。唯一似ていると言われる瞳が真っ直ぐと何かを捉えているのが分かった。真剣な眼差しを向けている様は、悔しいがなかなか、絵になっているのだ。


鼻から下が赤く染まっている以外は。


出血多量で死んでしまうかと思える程、真っ赤だ。綺麗にしてあった制服も、脱ぎ捨ててしまえば只のゴミと化すだろう。母様、私が無力でごめんなさい。またしても、未然に防ぐことが出来ませんでした。


嗚呼、近くに居たくない。遠くても嫌だが。


何故。兄が死線を越えようとしているのか。理由は簡単である。少しばかり先の方に、幼なじみのアラムがいるのだ。兄はおかしい。「可笑しい」では無いから注意するように。全く笑えたものでは無い。



「アラム超可愛い」



どの口がそんなふざけたことをほざくのだ。この口か、この口か。



「痛い、リディア痛い。俺の口に横向きのリコーダーは入らないよ」



じゃあ、縦になら入るのか。面白い、やってみろ。こんな気持ちの悪い兄など、どうなっても知るものか。



「何をそんなに苛立っているんだ。アラムを見てみろ、和むから」



よし、筆箱ならどうだろう。これ位イケなくては、将来軍人になどなれる筈が無い。鞄を開けようと視線を移動させた瞬間、視界の隅にアラムが映った。


…何だろう、この気持ちは。心臓がキュンと鳴る感じだ。



「そうだろう、和むだろう」



さも自らのことのように、誇らしげに胸を張る兄は果てしなく腹立たしいが。反論は出来ない。



事実、可愛いのだから。



「アラムは一人遊びが得意なんだ」



だらしない笑顔を零す兄は一先ず置いておこう。少し遠くに見えるアラムは蝶々を追いかけているようだった。フワフワと飛んでいる蝶々に、ふらふらと付いて行くアラム。視線は激しく輝いている。


と、思えば。
自分の足に躓いて転げた。…泣いている。うっかり握ってしまった蝶々の中身にも驚いている様子だ。


兄は泣きじゃくるアラムに駆け寄るだろうと思っていたのだが、兄は一向に動かない。どうしたのか。視線で問い掛けた。


「泣くアラムも好きなんだ」


帰ろう。こんな奴は知らない。アラムが不憫な奴だと思う。それ以上に自分が可哀想だと、泣けてきた。



「おや、」



兄の様子が変わった。何があったのだろうと思い、アラムに視線を向ける。目に映るのは帽子を被った、少年。



兄と同年代であろう、その男の子は見たことが無い。交友関係等、兄について知らないことは殆ど無いつもりだったが、修行不足だ。やり直さねば。


アラムと少年を眺める。何か会話をしているようだが、それを聞き取るには遠すぎた。取り敢えず、あの男の子が誰なのかを聞くために兄へ視線を向ける。


「ヴィクトール。転校して来たんだよ」


お前のところにもあれの弟が入ったはずなんだが、と兄は続けた。数日前にやって来た転校生の姿を記憶から引きずり出す。腹黒そうな雰囲気が、ああ兄弟だなと認識させた。


アラムの泣き声が酷くなって来ている。赤ん坊が癇癪を起こして泣いているようなそれは、此方に焦りを与えた。そろそろか、と溜め息を零した兄は二人に近付き始める。私はそれに付いて行った。


涙に濡れたアラムの目と、吊り目のヴィクトールの目が兄の姿を捉え、大きく見開かれる。仕方の無いことだ。そんな事も気にせず、兄はよく通る声で切々と語り掛けだした。


「ヴィクトール、どうしてお前はアラムを虐めるんだ」


名前を呼ばれたヴィクトールはビクリと肩を揺らした。俺か、俺なのかと視線がアラムと私を行き交う。私は深く頷いてあげた。


「…虐めてねぇよ。泣いてるから声掛けただけだろ」


「そうなのか、アラム」


ヴィクトールと同じ反応を示すアラムに、今度はヴィクトールも私と同時に頷いた。


「ヴィ、ヴィクトールがぁ、僕にぃ、なうぃううぃぃっうぇええ」


再び泣き出すアラム。正直、何と言ったのか理解出来なかった。ヴィクトールの舌打ちが聞こえる。


「何てことを言うんだ、ヴィクトール。アラムは転けて痛い思いをした上に、蝶々を自らの手で握り潰してしまったのだ。悲しいから泣く。それを『泣き虫』などと罵倒するなっ」


アラムが何を言ったのかやっと解った。何故、あれで理解出来ていたのかは謎だが、ツッコミたくは無い。


もう泣くな、と座り込んでいるアラムを立たせながら、兄は言った。


「ぶっきらぼうな言い方は、時に人を傷付ける。気をつけろ」



リディア行くぞ、と言われたが、暫くヴィクトールを見つめていた。兄とアラムの背が小さくなった時、ヴィクトールが呟いた。


「泣き声は好きじゃない」


この人も兄である。自分より弱い立場の者を守らなければ、と本能的に思うのだろう。余りにも不器用過ぎる様は、少しだけ、私の中の印象を変えた。



「そういう時は『泣くな』と言えば良いのよ」



頭を撫でてあげれば安心するわ。私はらしくない助言をして、ヴィクトールに背を向けた。




アラムと別れた後、もう少しで我が家へ辿り着く。たわいないことを話しながらの帰宅は何時もと変わらない。



「ヴィクトールも魅力的な奴だろう」



笑って言った兄に、どんな顔を向けたのだろうか。「お、お前も可愛いからな」と慌てている。別にそんな言葉が欲しい訳じゃない。


アラムを助けるふりをして、その実はヴィクトールと遊んでいたともとれる。兄の趣味にとやかく言うつもりは無いが。



母様、制服を汚したという罪で。この男を裁いて下さいませ。



鼻腔を血の匂いがくすぐった。



おわり

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